不妊症は女性側の問題と思われがちですが、原因の半数は男性にあると言われています。
このように不妊原因が男性側にあることを 「男性不妊」 といいます。
近年では、食生活や生活環境の変化などから、元気な精子をつくることができない男性が増えて
いるのです。 なかなか子供を授かることができない場合には男性もしっかりと検査を受けておくことをお勧めいたします。
この「男性不妊」の要因の大半は、精子をつくる過程で
何らかの障害や問題のある造精機能障害です。
しかし、精子の造精過程は、非常に複雑なために、
その原因を特定し、治療することは非常に難しいとされています。
男性の精液検査は不妊の6大検査の1つなので、なるべく
早い段階で受けておくことをお勧めします。
女性の検査は、痛みを伴う検査が多々ありますが男性が受ける精液検査に関しては、痛みはありませんし、自宅採取もできますので恥ずかしがらずに積極的に検査を受けましょう。
この造精機能障害という男性不妊症は、精子を作る機能に異常があって精子をうまく作れない、
または、精子がまったく作れないという不妊症です。
この造精機能障害には、おもに4つに分類がされます。
無精子症
造精機能障害の中でも重い症状になり、精液中に精子が一匹もいない状態です。
この「無精子症」は、男性不妊の2割程度と言われています。
精子はもともと精巣で作られますが、まったく作られていない状態を「非閉塞性無精子症」といい、精子は作られるが、精子の通り道がふさがっている事を「閉塞性無精子症」と言います。
しかし、精巣や精巣上体に精子が存在していれば、顕微授精などの不妊治療で受精・妊娠することが可能です。ただ、精巣や精巣上体にも精子が1匹もいない場合には、非常に残念ですが妊娠することが出来ません。
乏精子症
この「乏精子症」は、精液の中に精子はいるけれど、その数が少ないという障害です。
精子濃度が1ml中に2000万個未満の場合を言います(WHOの基準、1999年)。
不妊カップルの累積妊娠率は、運動精子数が900万個以下だと20%、1000~1900万個では37%、2000万個以上だと52%という資料があります。
精子の数が基準を少し下回る程度であれば、タイミング法などで妊娠の確立をあげます。
また、精子の数が2000~3000万ほどなら人工授精、300万以下では体外受精、100万以下なら顕微授精という治療法があります。
精子無力症
この「精子無力症」は、精子の数は正常だが、元気に運動する精子の数が全体の50%未満の
場合をいいます。
正常な精子では、約70~80%以上が運動しています。
この場合には、その精子の状態により人工授精や体外受精などの不妊治療を行ないます。
顕微授精(ICSI)は、精子無力症の人にとって、有力な受精方法と言われています。
精子奇形症
この「精子奇形症」は、精液の中に、奇形の精子が多い場合をいいます。
誰でも精子が100%正常ということはありませんが、 正常形態率が30%未満の場合は
「精子奇形症」といいます。
この場合の不妊治療としては、正常な精子だけを選んで、体外受精や顕微受精で受精卵を
手に入れて妊娠を促します。
この副性器障害という男性不妊症は、副性器と呼ばれる精巣や前立線、精嚢腺などの器官で炎症を
起こしてしまい、精子の運動量や生存率が急激に低下してしまう症状です。
運動機能が低下していると卵子のところまでたどり着けず妊娠に至らないことが挙げられます。
原因は、大腸菌や淋菌、クラジミア・トリコマティス、膣トリコモナス、結核菌等による感染とされており、
精液中に白血球が増加することが特徴です。
この精路通過障害という男性不妊症は、精子はつくられますが精管に問題があって、射精された精液に精子が混じらない場合をいいます。
通常、精巣でつくられた精子は、精巣上体、精管を通って射精されます。
しかしこの通り道が、炎症などにより詰まっていたり、狭くなっていることによって、閉塞性無精子症や、乏精子症となってしまうのが、精路通過障害です。
先天性のものから病気や事故の後遺症などによるものまであります。
軽症の場合なら、手術で回復させることも可能です。
この性機能障害という男性不妊症は、勃起障害(ED)、射精障害に大きく分けられます。
精神的な問題の場合や機能的な問題の場合またそれらが複雑に絡み合っている場合があります。
ED(勃起不全)
男性のペニスが勃起しないことを言い、以前はインポテンツと言われていました。
EDは性機能障害の中でも70%を占めると言われています。
原因は「心の問題」が多く、不妊期間中の義務的あるいはムードのない性交の繰り返しが
「性欲減退」や「自信喪失」につながると言われています。
射精障害
挿入は出来ても途中で柔らかくなってしまうなど、膣内に射精できないことを射精障害と言います。EDと同じように、排卵日付近の義務的、あるいはムードのない性交の繰り返し、精神的な
マンネリ間や過去のセックスの失敗などが原因とされています。
また加齢による性欲の減少も大きく影響しています。
その他にも身体的な問題の、「逆行性射精」や「糖尿病による射精障害」などの場合もあります。