不妊治療で一番先に行われるのがこのタイミング療法です。
タイミング療法は、基礎体温をもとに、月経周期を確認し、卵胞の大きさや子宮内膜の状態を超音波で確認しながら、排卵日を予測し性交する日を合わせていきます。
タイミング法には、自然周期によるものと排卵誘発剤を用いて人工的に月経周期を作るものが
あります。
上記の図の「妊娠しやすい時期の中で、最も妊娠確立が高い期間」を狙って、性交のタイミングを
取るように指導することが多いのですが、最近では月経周期に異常がなくても初期の段階から排卵誘発剤などを使用するケースも多くなっているようです。
自然周期でのタイミング法は、自然の排卵を待って行う方法です。
基礎体温をもとに、超音波で卵巣の中の卵胞の成長を観察します。
個人差もありますが、卵胞は通常1日に1~2ミリ成長し、直径18~22ミリで排卵しますので、
低温期の日数経過や卵胞の直径の変化でだいたいの排卵日を予測していきます。
現在では経膣超音波とホルモン検査によって、2~3時間の誤差で排卵時間が予測できます。
超音波で排卵が近いことが分かった場合には、頚管粘液の増加の時期、排卵痛の有無、基礎体温
の変化、排卵検査薬などを使いながら排卵する時期にあわせてタイミングを取るように指導します。
自然周期によるタイミング指導で妊娠にいたらなかった場合や、排卵がうまくいかないときなどに行ないます。
クロミッドやセロフェンといった排卵誘発剤を月経の3~5日目に5日間服用し、卵胞の発育を促すことが多いようです。
この薬を使うことによって脳下垂体を刺激し、そこから分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体化ホルモン(LH)の量を増やすことができます。
またこれらの排卵誘発剤は卵胞の成長を促進するだけでなく、排卵を促したり、黄体機能をよくしたり、1度に成長する卵胞の数を増やす目的もあります。
子宮内膜が薄くなる | 頚管粘液の分泌量が減る | 月経周期が乱れる |
基礎体温が不安定になる | むくみがでる | その他、体調不良など |
妊娠に必要な他の因子の状態を悪化させることがあります。
このような弊害が出ることもありますので医師とよく相談しながら使う必要があると思います。
さらに強力に排卵を誘発する薬として、卵胞刺激ホルモンと黄体化ホルモン製剤であるhMGという
注射もあります。これは卵巣を直接刺激する作用があるので、クロミッドより強力で、体外受精など
を行う際によく使われます。
この注射を使用することによって、卵胞がたくさん育ち多胎妊娠の恐れもありますので、使用は慎重に行ないます。
これらの薬剤を使いながら、超音波検査で卵胞の成長の度合いを確認し、もっともよいタイミングを
取ることができるようにhCGをいう注射をして、排卵を促進させることもあります。
この注射を使うことによって、あとどれくらいで排卵させることが出来るかを容易に予測することが可能となるので、タイミングを取りやすくなるというメリットがあります。
タイミング療法をする際に知っておいて欲しいことは、卵胞から飛び出した卵子の生存時間は
約24時間、精子の生存時間は約72時間であることと、射精後5分程度で精子は卵管を遡上して
受精の場となる卵管膨大部に達することができることです。
ベストなタイミングを計って1発勝負をするというよりも、排卵期に近づいたときにできれば3日程度
連続でタイミングと取ったり、排卵期前後で1日おきに3~5回程度タイミングを取ることが大切になってきます。
不妊症の方のお話を聞いていると、タイミングの時期にほんの数回だけ性交をする方も多く、
タイミングの取り方によって、妊娠率が異なってくることをご理解していただき、できるかぎり精子と卵子が出会う回数を増やすことが何よりも大切なことを知っていただきたいと思います。